法人・個人事業の融資(借入)成功に必須の基礎知識|愛知県一宮市の税理士執筆
愛知県一宮市の税理士の藤野です。
この記事では事業を円滑に進めるのに欠かせない借入金(融資)について、主に下記の内容を解説します。
- 融資(借入金)の成否を決める事業計画
- 2種類の融資(借入金)
- 融資を受けるために理解が必要な金融機関の考え方
借入金は正しく活用すれば事業の継続や拡大に大きく寄与してくれます。
一方、借入金(融資)についてよく理解しないまま、目先の資金繰りに囚われて安易に借りようとすると借入に失敗して資金がショートしたり、悪条件での借入になる危険性もあります。
ぜひ正しい知識をつけて、適切な借入を行い事業の安定や拡大を図っていただきたいです。
1.融資(借入金)に対する心構え
1-1.融資(借入金)の成否=経営者の覚悟=事業計画
事業を行うにあたり又は事業を拡大していくうえで、借入金が必要となってくる企業が圧倒的に多いと思います。
勿論、借入する必要がないくらいの自己資金(自己資本)を充実させてから事業を開始するに越したことはないですが、そのような企業はごく稀かと考えます。
そこで借入が必要となる企業で大事となってくるのが、「明確な目標設定」つまりは「事業計画」ではないでしょうか。
企業をどのように成長させていくかという経営者の覚悟が事業計画に反映されるものであるべきです。
1-2.事業計画で明白になった借入金の必要性を金融機関へ説明する
事業計画を遂行していくのにあたり、どこの時期で一旦は「借入金」という資金が必要になってくるかがおのずと明白になってくるはずです。
その明白になった部分を金融機関さんへ説明して融資を受けられるように交渉するのです。
聞く側の金融機関さんが納得して融資を実行して頂ければ、経営者も自信を持ち事業を遂行できるはずです。
こういった一連の作業を経営者自ら出来れば、それは文句のつけようがない素晴らしいことです。
ただ、開業・創業される方は経営者としてはまだ経験年数が浅い状況ですし、「経営計画」といきなり言われても後退りされる方が圧倒的に多いと思います。
「経営者自身で全てのことをやる」というのは究極の理想論ではないでしょうか。
やるべきことは解っていても具体的に数値化していくのは、プロである税理士やコンサルの方から指導を受けながら進めていけば良いと思います。
2.融資(借入金)の種類について
借入金については、まずは大まかに「短期借入金」と「長期借入金」に分類されます。
短期借入金 | 約定上での返済期限が1年以内の借入。例えば、手形借入、当座借越等。 |
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長期借入金 | 1年以上の期間をかけて返済していく借入形態。 |
以下で詳しく説明していきます。
2-1.短期借入金(1年以内の返済期間)
2-1-1.手形借入
2-1-1-1.手形借入とは
借主を振出人、貸主を受取人とする約束手形を振り出して、手形金額に相当する額の借入を受けること。
最初に契約書を締結した後は、手形を振り出すのみで借入が受けられますので、後に話します「証書借入」のようにいちいち契約書を交わす必要が無いのが利点です。
但し、最初に契約書を交わしたからと言って、いつでも手形借入を受けられるというものではありません。
会社の財務状況により断れることも勿論ありますし実績が無い最初の段階では、借入上限枠が決められるはずです。
2-1-1-2.手形借入の用途
手形借入を利用する場合の多くは、繋ぎ資金として必要になった時です。
例えば、売上の入金サイトが非常に長く、仕入業者への支払期日が先に来た場合の売上代金入金までの繋ぎ資金の為に借入するという具合です。
このように、近い将来に確率の高いキャッシュインがある前提での手形借入という風に認識していた方がよろしいかと思います。
人件費などの運転資金の為に手形借入を行う場合が稀に拝見しますが、私はあまりお勧めしません。
今では銀行もかなりの実績・信用がないと運転資金での手形貸付は行わないかと考えます。
2-1-2.当座借越契約
2-1-2-1.当座借越とは
あらかじめ銀行と約定した借越限度額の範囲で、当座預金残高が不足した場合(残高がゼロ)であっても小切手の振出が実効される銀行との契約
小切手や手形の決済が回ってきた際に、当座預金残高が無く回ってきた金額が引き落とせない場合は不渡り処分となります。
2回不渡りを発生させますと、手形交換所から銀行取引停止処分を受け金融機関との取引が出来なくなります。
当座借越契約はこの危険を回避するのに有効な手段となります。
上記の形態は一般当座借越という当座預金を利用した方法で、借越した場合は当座預金残高がマイナスになっていく仕組みで残高を気にせずに(枠内の範囲)利便性が高いです。
この他にも当座預金とは別に専用の当座貸越口座を設ける専用当座借越があります。
これは支払伝票を起こし融資を受ける方法ですが、この方法ですと当座預金からの振出ではありませんので不渡りにならないよう当座残高に注意を払う必要が生じます。
基本的には一般当座借越も専用当座借越も何度でも繰り返して借入と返済を行うことが可能になります。
2-1-2-2.当座借越の用途
上の「当座借越」でも述べたように不渡り回避の為に有効でもあると同時に、入出金のサイトが相違する場合の支払が先に発生する場合でも有効な手段となります。
手形借入と同じような考えではありますが、手形借入については資金不足が発生した都度、銀行に赴いて相談し手形借入が受けられるかどうかの審査を受ける必要があります。
しかし、当座借越契約を結んでいれば約定で定めた金額の枠内であれば、いちいち審査を受けることなく当座からの振出が可能となります。
4月1日に500万支払・・・銀行に手形借入可否について相談。
5月10日に300万支払・・・ 同上
事前に極度額2000万円の当座借越契約を結ぶ。
4月1日に500万支払・・・小切手振出すのみで特に手続無し。
5月10日に300万支払・・・ 同上
当座借越契約は最初に借越契約を結べば、その後においては特に手続きすることが無いので、手形借入より当座借越が理想であると考えます。勿論、利率にもよりますが。
2-1-2-3.当座借越契約の注意点
当座借越契約の注意点:契約を結べたら、永続的に利用できるかと言いましたらそうではありません。事業年度が終了する都度、会社の決算書を銀行へ提出しなければなりませんが、業績が思わしくないと当座借越契約は打ち切られます。
ですので、業績が悪く借越残高が残っている状態で当座借越契約を打ち切られますと、残高の一括返済若しくは5年以内の返済期間での毎月返済を求められます。
長期間マイナス残高にしていた後に事業不振により返済を強いられた場合は、会社にとっての資金繰りダメージは大きなものとなります。
また、最近では私の印象ですが「一般当座借越」よりも「当座貸越口座」を設けて当座借越契約を結ぶ金融機関が多い印象です。
2-1-3.短期借入金のまとめ
短期借入の代表なものとして「手形借入」及び「当座借越」を説明してきましたが、この短期借入金と上手なお付き合いをしていくには以下に示す内容がポイントかと思います。
- 「手形借入」も「当座借越」も会社の業績が良くない場合は応じて頂けないという認識で。
- どちらを利用するにしても、あくまでも短期的な資金繋ぎで利用するものである。
- 取引約定契約を結び永続的に利用したい場合は、大幅な赤字を出さないことと2期連続赤字を出さないように心掛けておく。
「当座借越」については約定期間が2年というのが多いと思います。
ですので、利用期間中にマイナス残高が続き業績も思わしくない場合は、期限到来時に銀行から一括返済若しくは5年以内の分割返済に切り替えられる想定をして準備しておきましょう(または事前相談)。
2-2.長期借入金(1年超の返済期間)
長期借入金の用途については大まかに2つに分類出来ると考えます。
1つは「運転資金」の為の借入でもう1つは「設備資金」の為の借入です。
運転資金=設備購入の為の借入ではなく、会社の資金繰りを回すための借入
例えば、人件費支払いの為に借入をするとか、当面の会社の固定費支払の為に月額固定費の数ヶ月分を借りるというイメージです。
設備資金=機械装置・高額なソフトウェア・車などの固定資産購入の為の借入
この長期借入金については金融機関での審査が通りましたら返済期間・利率・返済方法・遅延損害金等を取り決めた金銭消費貸借契約を交わします。これを「証書借入」と言います。
以下、「運転資金」と「設備資金」についてもう少し詳細にお話していきます。
2-2-1.設備資金の借入
設備資金の借入については文字通り設備購入の為の借入ですので、代表的なものとしては車・機械・高額なソフトウェア等の固定資産の購入です。
- 固定資産等の返済年数は5年~7年が主流。
- 返済期間を長く設定出来る固定資産は倉庫・建物など。(耐用年数を斟酌して決めていると思われます。)
- 車の耐用年数は車種によりますが4年~6年と決められている。
この耐用年数よりかなり長く返済期間を設定して融資する金融機関はかなり少ないと思われます。
また逆に、耐用年数20年の建物の購入資金で、5年の返済期間を提示してくる金融機関はほぼ無いと考えられます。
固定資産購入の際は、借入した金額の返済が滞りなく出来るような「資金計画」・「経営計画」を作成しますことをお勧めします。
また、作成後も定期的に実績と計画との比較検討も必ず必要となります。
2-2-2.運転資金の借入
運転資金の為の借入についてですが、設備購入の為の借入ではなく会社の運営に必要な資金の借入ということになりますので、借入の際には慎重な判断を要すると考えます。
運転資金を借入するということは会社の資金が回ってないのではないかと銀行はまず考えると危惧します。
運転資金の借入=金融機関に会社の資金が回っていないと判断される可能性がある
運転資金の借入時でも、明確な理由をもって金融機関と交渉しないと借入は難しいと考えます。
私見ではありますが、金融機関が相談に応じて頂けるケースは以下のような場合ではないでしょうか。
- 開業又は創業時のため、向こう数ヶ月の運転資金。
- 新たに事業を始めるため、暫くの売り上げが読めない等の理由。
- 新規開業でなく既存で事業を行っていたが、事業拡大に伴う必要な運転資金。
- 新規開業でなく既存で事業を行っていたが、事業拡大に伴う必要な運転資金。
- 季節変動的な事業をされている関係で、繋ぎの資金借入が必要な場合の運転資金。
- 手形借入や当座借越が出来ない場合を想定。
上記の理由が無く、ただ単純に資金がないから運転資金を融資して欲しいと相談しても、金融機関からしたら、「何に使うの?」「何故、資金がないの?」「資金枯渇の理由は?」となるのが自然の流れでしょう。
このような質問があった場合に明確に答えられなければ金融機関は間違いなく融資しないでしょう。
ただ、上記の①~③以外の理由で明確に説明ができ、金融機関も会社の将来性や社長の経営者としての能力を評価した場合には融資を受けられることもあると考えます。
3.法人・個人事業の融資(借入)成功に必須の基礎知識まとめ
融資(借入)の種類や仕組み自体はシンプルですが、事業内容や目的に応じて適切な事業計画、申請を行う必要があります。
それが融資成功の可否や借入金額の大きさに直結するからです。
コストがかかるように思える専門家への依頼も、結果的に融資自体や適切な借入金額を引き出しやすくなるケースも多いので、一度ご相談されることをお勧めします。
愛知県、岐阜県の事業者様であれば私の方でも相談を承りますので、お問い合わせフォームよりご連絡ください。